今細々と連載している漫画は「大図書館へ」という副題を持つ通り、いろんなひとたちが本を求めて歩みを進める物語です。そんな漫画を描いている私ですが、実は今の今まで本を読むのが大の苦手でした。
小学生半ばで少し本を読むマイブームはあったもののそれからはパッタリ。高校生の頃にいやというほど現代文の試験勉強をしたことで、活字に対して苦手意識が強まりました。大学では文系とカテゴライズされる分野を修めたにも関わらず、レポートの参考文献もおざなりに、ほとんど真面目に本を読まずに卒業しました。必要に迫られて何冊か本のページをめくることもありましたが、それでもまともに読破したのはせいぜい1、2冊程度だったような気がします(恥ずかしい)。
長期化するコロナ禍で文字通りさまざまな側面で行き詰まりを感じて、自身の行動様式に努めて新しい風を吹かせようとしているのですが、そのうちのひとつが図書館に行くことでした。スペイン風邪が流行したとき世界はどういう変化を辿ったかに強い興味を抱いたことがきっかけです。一冊の分厚い本を手に取ってページを進めていくと、100年ほど前の出来事なのにまるで現代の様相を鏡うつしにしたような記述の数々に驚くばかりでした。現在蔓延しているウイルスに対する現在を生きるメディアや学者たちの考察よりもより現在を生きる羅針盤たる知識であるように感じました。
一冊を読み終える頃には幼少の頃から続いていた活字に対する苦手意識はだいぶなくなっていたように感じます。かくのごとくして初めて自分から進んで分厚い本を読破するに至りました。思っていた以上に達成感が強かったです。本を読むのも楽しいものですね。人との正面切った対話の機会が非常に希薄になりがちな今だからよりそのように感じるところもあるのかもしれませんが。それと、オセロの石がひっくり返るようにひょいと自分の性質が変わることもあるものなんですね。