毎年恒例になりつつある総括ですが、今年もなにか書きます。
最近、「こういうのでいいんだよ」というフレーズをよく耳にする気がします。自分も、ふと口をついて出そうになることがままあります。起りはよく知らなかったのですが、某グルメ漫画の一節だそうです。全文は『ほー いいじゃないか こういうのでいいんだよ こういうので』。それがネットスラングとして伝播したようです。
なんでこのフレーズが口に馴染むかを、自分なりに少し考えてみます。
こういうの「で」いいということは、少なくとも「こういうの」は自分の理想に完全に適うものではないように思われます。だが、自分を満足にすることができる。一定のラインを超えている。そういう点において、「こういうの」は十分である。
そこにあるのは、高尚な理想を掴んだときに湧き上がるような歓喜ではなく、どちらかというと安堵ではないでしょうか。高級料理店で星がついたグルメを食したときの感動ではなく、空腹にさいなまれる中でようやくお腹を満たすことができた充足感。そういうものに近いのかなと思いました。
そう考えると、きっとこのフレーズが口に馴染むうちは、なにかに飢えているのかもしれません。その原因や理由はさまざまだと思いますし、十把一絡げに論じられることではないのだと思います。ですが、「こういうのでいいんだよ」が口をついて出てきたとき、「こういうの」のさす先によって得られた充足感を、何らかの原因によって、長い間欠如した状態にさせられていたのかもしれません。
原文の文脈は食です。先の例示も食ですし、「飢え」の部首も食です。ですが、「こういうの」がさす先は必ずしも食とは限らない。精神の飢えは胃の訴えに比べて気づきにくいように思いますから、こういった顕現可能な言葉やなんかで、ひとつひとつ自身の状態に気づいていきたいです。
本年もありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。